毎日使う換気扇から突然「キーン」「キュルキュル」という高く鋭い音が聞こえ始めると、生活の中で非常に耳障りに感じます。
「油汚れが詰まっているだけだろう」と考えてフィルターやファンを徹底的に掃除しても、全く音が止まらないという経験をする人は少なくありません。
実は、この高い金属音や電子音は、単なる汚れではなく、換気扇の内部部品が物理的な限界を迎えていることを示しています。
この状態を放置して使い続けると、ある日突然動かなくなったり、内部のモーターが異常な高温を持って発煙・発火トラブルにつながったりする恐れがあります。
この記事では、なぜ掃除をしても直らないのかという根本的な原因を明らかにし、危険な自己流修理のリスクや、賃貸・持ち家それぞれの正しい対処法について、清掃のプロが事実に基づいて詳しく解説します。
換気扇の異音「キーン」の正体とは?掃除しても直らない主な原因
一生懸命掃除をしても状況が改善しない場合、その原因は「汚れ」ではなく、部品の摩耗や電気的な不具合といった「寿命」に近いトラブルが発生していることがほとんどです。
なぜ表面をきれいにしても音が消えないのか、その内部構造とメカニズムを詳しく解説します。
モーター軸受(ベアリング)の経年劣化とグリス切れによる金属音
換気扇のファンを高速で回転させる中心部分には、モーターがあります。
このモーターの軸を支え、スムーズに回転させるために不可欠な部品が「軸受(ベアリング)」です。
新品のときは、この軸受の内部に潤滑油(グリス)が十分に充填されており、金属同士が直接触れ合わないように保護されています。
しかし、5年、10年と長期間使用し続けると、回転の熱や経年変化によってグリスが徐々に蒸発したり、固まって劣化したりします。
グリスが枯渇してしまうと、回転する軸とそれを支える軸受の金属部分が直接こすれ合う状態になります。
金属同士が高速で摩擦を起こすことで、「キーン」という高い金属音や、「キュルキュル」という擦れる音が発生します。
これは部品そのものが物理的にすり減っている状態(摩耗)であるため、換気扇の羽根やフィルターについた油汚れをどれだけきれいに落としても、音の原因である軸受のダメージは回復しません。
一度すり減った金属は元に戻らないため、根本的な解決には部品交換が必要となります。
24時間換気システム特有の「気圧差」が生む風切り音の可能性
近年建てられた気密性の高い住宅やマンションでは、24時間換気システムの稼働が義務付けられています。
この環境下では、換気扇の故障ではなく、室内の空気の流れ(気圧差)によって音が発生するケースがあります。
換気扇は室内の空気を外に出す役割を持っていますが、同時に外から新しい空気を取り入れるための「給気口(通気口)」が必要です。
もし、部屋の給気口が閉じていたり、フィルターがホコリで詰まっていたりすると、室内に入ってくる空気が不足します。すると換気扇は、密閉された部屋から無理やり空気を吸い出そうとして大きな負荷がかかります。
このとき、ドアの隙間やサッシのわずかな隙間から、空気が猛スピードで通り抜けようとします。
この現象により、笛を吹くような原理で「ピー」「キーン」という高い風切り音(隙間風の音)が発生することがあります。
これは換気扇本体の異常ではなく、室内の空気圧のバランスが崩れていることが原因です。
コンデンサーや電子部品の劣化による電気的な共振音
モーターの回転を制御するために、内部には「コンデンサー」などの電子部品が組み込まれています。
これらの部品も時間の経過とともに劣化します。電子部品が劣化すると、正常な電気制御ができなくなり、部品自体が微細に振動して音を出すことがあります。
これを専門的には「磁気音」や「コイル鳴き」と呼ぶことがあります。
この場合の音は、機械的な摩擦音とは異なり、常に一定の高さで「キーン」と鳴り続ける特徴があります。
また、ファンが回る速度に関係なく音がしたり、スイッチを入れた瞬間にファンが回る前から音がしたりすることもあります。
電子部品の劣化は外見では判断しにくく、電気回路としての寿命を意味しています。
表面の汚れを落としても内部の「金属摩耗」は修復できない理由
多くの人は異音が聞こえると、「油汚れがバランスを崩しているせいだ」「ホコリが詰まっているせいだ」と考え、分解掃除を試みます。
確かに、油汚れが固着してファンが重くなっている場合は「ゴーッ」「ブォーッ」という低い唸り音が鳴ることが多く、その場合は掃除で改善します。
しかし、「キーン」という高く鋭い音は、前述の通り金属部品の摩耗や変形、あるいは電気部品の劣化に由来します。
すり減って隙間ができた金属部品や、機能が低下した電子回路は、洗剤で洗っても元には戻りません。
この段階に至っている場合、清掃は解決策にはならず、修理または交換を検討すべき時期に来ているといえます。
自分で直せるか判断!換気扇のキーン音を特定するセルフチェック
音が鳴る原因が、部屋の環境によるものなのか、それとも換気扇自体の故障なのかを見極めることは非常に重要です。
専門知識がなくても誰でも簡単にできる確認方法と判断基準を紹介します。
【環境】窓や給気口を開けると音が止まる場合は「気圧」が原因
まず最初に行うべきテストは、部屋の密閉状態を解消することです。
換気扇を回した状態で、部屋の窓を少し(5〜10センチ程度)開けるか、壁にある給気口を全開にしてみてください。
もしその瞬間に「キーン」という音がピタリと止まったり、音が極端に小さくなったりする場合は、換気扇本体の故障ではありません。
部屋の気密性が高すぎて空気が不足し、無理な吸引力がかかっていたことが原因です。
この場合の対策は、修理や掃除ではなく「空気の通り道を確保すること」です。
・給気口が家具で塞がれていないか確認する
・給気口のフィルターが真っ黒に詰まっていないか確認し、清掃または交換する
・換気扇を使用する際は、ドアや窓を少し開けて空気を取り入れる
これらを実践することで、音は解消されます。
【故障】スイッチを入れてから音が鳴り始めるまでのタイムラグ確認
次に、音が鳴り始めるタイミングを確認します。
換気扇のスイッチを入れた直後、まだファンがゆっくり回り始めた段階からすぐに「キーン」と鳴る場合、これはコンデンサーなどの電気部品の異常や、モーター内部の電気的なトラブルが疑われます。
一方で、スイッチを入れて最初は静かでも、回転スピードが上がってくるにつれて徐々に「キーン」「キュルキュル」という音が大きくなる場合は、モーター軸受(ベアリング)の摩耗やグリス切れの可能性が高いです。
回転数に合わせて音の大きさが変化するのが特徴です。
どちらの場合も、換気扇内部の重要部品に不具合が起きているため、掃除では直りません。部品交換や本体交換が必要な「故障」と判断できます。
【共振】本体カバーを手で押さえて音が止まる場合の対処法
換気扇のカバー(化粧パネル)や本体の枠部分を、手で軽く押さえてみてください。
もし手で押さえている間だけ音が止まったり、音が小さくなったりする場合、それは「共振音(ビビリ音)」の可能性があります。
モーターの振動が、ネジの緩んだカバーや壁面に伝わり、接触部分が震えて音を出している状態です。
このケースであれば、自分で直せる可能性があります。
・カバーを固定しているネジやバネが緩んでいないか確認し、締め直す
・カバーと本体の間に、隙間埋めテープや防振ゴムなどを挟んで振動を吸収させる
これらの処置で音が止まるなら、深刻な故障ではありません。
ただし、強く押さえないと止まらない場合や、内部から音が響いている場合は、やはりモーター側の異常が疑われます。
トイレ・浴室・キッチンなど「設置場所」による発生原因の違い
換気扇が設置されている場所によって、故障の原因となる汚れの質や傾向が異なります。
・キッチン(台所): 油を含んだ煙を吸うため、油汚れによるベタつきが主な原因です。油が酸化して固まるとファンが重くなり、モーターに過度な負荷をかけます。
「キーン」と鳴る場合は、長年の負荷で軸が歪んでいるか摩耗しています。
・浴室(お風呂場): 常に湿気にさらされているため、内部の金属部品にサビが発生しやすい環境です。
サビによって軸が回りにくくなり、無理に回そうとして異音が発生します。
また、カビの胞子や衣類の繊維ホコリが湿気で固まり、内部に蓄積することも原因です。
・トイレ: 24時間365日回し続けている家庭が多く、稼働時間が非常に長くなりがちです。
油や湿気の影響は少ないものの、単純な「使いすぎ(長時間稼働)」によるモーター寿命が原因の大半を占めます。
設置場所ごとの特性を理解しておくと、業者に相談する際も「お風呂場の換気扇で、サビっぽい音がする」など具体的に伝えやすくなります。
やってはいけない!換気扇の異音対策としての「潤滑油」のリスク
インターネット上の掲示板や動画サイトなどで、「換気扇の異音にはスプレー式の潤滑油を吹き付ければ直る」という情報を見かけることがあります。
しかし、これはプロの視点から見ると非常に危険で、故障を悪化させる可能性が高い行為です。
なぜ安易な注油がいけないのか、そのリスクを詳しく解説します。
市販の浸透潤滑剤がプラスチック部品の破損(ケミカルクラック)を招く
ホームセンターなどで手軽に購入できるスプレー式の浸透潤滑剤には、錆びたボルトを緩めやすくするために「石油系の溶剤」が含まれています。
この溶剤は金属には有効ですが、換気扇のファンやケーシング(枠)によく使われている「ABS樹脂」や「ポリスチレン」などのプラスチック(樹脂)を侵食し、溶かしてしまう性質を持っています。
樹脂部分にこの油が付着すると、化学反応によって「ケミカルクラック」と呼ばれる微細な亀裂が入ります。
この亀裂は時間とともに広がり、ある日突然、高速回転しているファンがバラバラに砕け散る事故につながる恐れがあります。
飛び散った破片で怪我をする危険性もあるため、プラスチック部品が使われている家電製品に、石油系溶剤を含む潤滑剤を吹き付けることは厳禁です。
揮発性が高いため一時的に音が止まっても数日で再発・悪化する
スプレー式の潤滑剤は、狭い隙間に入り込むためにサラサラとした液体状になっています。
これは非常に揮発性(蒸発しやすさ)が高く、吹き付けた直後は滑りが良くなって音が止まることがありますが、その効果は長く続きません。
早ければ数日、長くても数週間で油分が乾いてしまいます。
さらに悪いことに、このサラサラした油は、もともと軸受の中に残っていた粘り気のある「固形グリス」を溶かして洗い流してしまいます。
その結果、数日後にスプレーの油が乾いたときには、以前よりも完全に油分がない状態(油膜切れ)となり、金属同士の摩擦がより激しくなります。
結果として、再発したときの異音は最初よりも大きく、深刻なものになってしまいます。
ホコリを吸着させてしまいモーター故障や発火の原因になる恐れ
スプレーで勢いよく油を吹き付けると、狙った軸受だけでなく、周囲のモーターコイルや配線、電子基板にも油が飛び散ります。
この付着した油は、空気中を漂う細かいホコリを吸着します。
油とホコリが混ざり合うと、ベタベタした「ヘドロ状の汚れ」となり、モーター内部に蓄積します。
この汚れが通気口を塞いでモーターの放熱を妨げ、異常過熱を引き起こしたり、電気の通り道に付着してショート(短絡)させたりする原因になります。
最悪の場合、そこから発火して火災につながるリスクがあります。無闇に油を撒き散らすことは、安全性を著しく損なう行為です。
注油可能な機種と「メーカー指定グリス」以外を使用してはいけない理由
昔の古い換気扇には「注油口」という小さな穴があり、そこから油を差すことがメンテナンスとして認められていました。
しかし、現在主流となっている換気扇のほとんどは、「メンテナンスフリー」と呼ばれる密閉型のモーターを採用しています。
これは内部に特殊なグリスが封入されており、外から油を差す必要がない(差すことができない)構造になっています。
無理に隙間から油を入れようとしても、肝心な部分には届かず、周囲を汚すだけです。
もし仮に分解して注油を行う場合でも、メーカーが指定する「耐熱性」や「粘度」の高い専用グリスを使用しなければなりません。
市販の多目的オイルでは温度や回転数に耐えられず、すぐに劣化してしまいます。
取扱説明書に「注油禁止」や「注油不要」と書かれている場合は、絶対に注油を行わないでください。
賃貸マンションで換気扇からキーン音がする場合の費用負担と連絡手順
賃貸物件にお住まいの方にとって、設備の故障は「誰がお金を払うのか」が最大の懸念事項です。
自己判断で勝手に行動すると後悔することになります。正しい費用負担の考え方と、管理会社への連絡手順を整理します。
原則として「経年劣化(寿命)」による故障は貸主(大家)の負担
賃貸契約において、あらかじめ備え付けられているエアコンや換気扇などの設備は、貸主(大家さん)の持ち物です。
入居者が普通に生活していて発生した故障、つまり「自然損耗」や「経年劣化」による修理・交換費用は、原則として貸主が負担する義務があります。
特に「キーン」という異音は、内部部品の摩耗や電気回路の劣化が原因であることが多いため、入居者の使い方が悪かったわけではありません。
長年住んでいる場合や、入居した時点で既に古い換気扇だった場合は、堂々と管理会社や大家さんに連絡して修理を依頼しましょう。
費用を請求されることは基本的にはありません。
入居者の「清掃不足」による油詰まりが原因の場合は借主負担の可能性
一方で、入居者には「善管注意義務(借りたものを大切に使う義務)」があります。
もし、何年も全く掃除をせず、換気扇が油まみれでドロドロになり、その汚れが原因で動かなくなったり異音が出たりしたと判断された場合は、入居者の過失とみなされる可能性があります。
この場合、修理費用や清掃費用の一部または全額を請求されることがあります。
ただし、「キーン」という金属音に関しては、単なる汚れ以上の機械的な寿命が原因であることが多いため、必ずしも入居者負担になるとは限りません。
まずは隠さずに状況を報告し、専門業者の判断を仰ぐのが賢明です。
勝手に業者を呼んで分解修理を行うと退去時にトラブルになるリスク
音がうるさいからといって、管理会社に連絡せずに自分で修理業者を手配したり、新品の換気扇を買ってきて交換したりするのはNGです。
たとえ良かれと思って行ったことでも、貸主の許可なく設備を変更することは契約違反になる可能性があります。
修理費用を後から請求しても認めてもらえなかったり、退去時に「勝手に仕様を変えた」として、元の状態に戻すための費用(原状回復費)を請求されたりするトラブルに発展しかねません。
賃貸物件の設備トラブルは、必ず管理会社か大家さんを通して対応するのが鉄則です。
放置すると危険?プロに点検・交換を依頼すべき症状とタイミング
「うるさいけれど、とりあえず回っているからまだ大丈夫」と考えて放置するのは危険です。
単なる騒音問題を超えて、重大な事故につながる前にプロに見てもらうべき危険な兆候があります。
異音と同時に「焦げ臭いニオイ」や「本体の発熱」がある場合は即使用中止
「キーン」という異音に加えて、鼻をつくようなプラスチックやゴムが焦げた臭いがする場合、あるいは換気扇のスイッチ付近や本体カバーが手で触れられないほど熱くなっている場合は、緊急事態です。
これはモーター内部でショートが起きかけているか、摩擦熱や過負荷によって異常過熱している状態です。
そのまま使い続けると、発煙や発火に至り、火災を引き起こす可能性が非常に高いです。
すぐにスイッチを切り、ブレーカーを落として、絶対に使用しないでください。これは「修理」や「掃除」の段階を超えており、直ちに交換が必要です。
製造から10〜15年経過している換気扇は「設計上の標準使用期間」超過
換気扇を含む家電製品には、「設計上の標準使用期間」という安全に使用できる目安の期間が設定されています。
多くのメーカーでは、標準的な使用条件で10年から15年程度としています。
本体に貼られたシールに「製造年」や「設計上の標準使用期間」が記載されていますので確認してみましょう。
この期間を過ぎて使用している場合、絶縁体の劣化やプラスチックの硬化などにより、事故が発生する確率が高まります。
もし15年以上前の換気扇から異音がしているなら、それは明確な寿命の合図です。
修理しようとしても、メーカーに交換用部品の在庫がない(補修用性能部品の保有期間終了)ことが多く、本体ごとの交換が推奨されます。
プロの分解清掃で改善するケースと「本体交換」が必要なケースの違い
プロの業者に依頼する場合でも、必ずしも「交換」になるとは限りません。
業者は現地で分解点検を行い、以下の基準で判断します。
・清掃で改善するケース: 異音の原因が、ファンにこびりついた油汚れによる回転バランスの崩れである場合や、ファンケースへの異物(虫やゴミ)の接触である場合です。
この場合は、プロによる徹底的な分解洗浄で新品のような静かさが戻ります。
・本体交換が必要なケース: モーター軸の摩耗、電子基板の故障、軸受の焼き付きなど、部品自体の損傷が確認された場合です。
また、製造から10年以上経過している場合は、清掃してもすぐに別の場所が壊れるリスクが高いため、交換を提案されることが一般的です。
無駄な清掃費用を払わないためにも、まずはプロに現状を見てもらい、「掃除で直るのか、交換が必要なのか」の診断を受けることが大切です。
24時間換気(ロスナイ等)のメンテナンス費用相場と業者選びのポイント
通常の換気扇とは異なり、熱交換型の24時間換気システム(ロスナイなど)は、内部構造が複雑で、フィルターや熱交換素子(エレメント)のメンテナンスが必要です。
これらの機器から異音がする場合、一般的な清掃業者では対応できないことがあります。
業者を選ぶ際は、「電気工事士」の資格を持っているか、換気設備の施工実績が豊富かどうかをホームページなどで確認してください。
単に表面を拭くだけの業者ではなく、ダクトや内部構造まで理解している業者に依頼することで、「清掃で対応できる範囲」と「工事が必要な範囲」を的確に見極めてもらえます。
まとめ:キーン音は換気扇の不具合を知らせる合図。無理な自力修理よりプロの診断を
換気扇から聞こえる「キーン」という不快な音は、単なる汚れのサインではなく、機械としての限界や危険な不具合を知らせる重要な合図です。
「油を差せば直るだろう」という安易な自己流修理は、かえって故障を悪化させたり、最悪の場合は発火事故を招いたりするリスクがあります。
特に設置から10年以上が経過している場合は、寿命の可能性が高いため、安全のためにプロによる点検や交換を検討すべき時期です。
賃貸の方は管理会社へ、持ち家の方は信頼できる清掃業者や設備業者へ相談し、異音の原因を正しく特定することから始めてください。
快適で安全な生活を取り戻すために、早めの行動をおすすめします。